工事現場の作業者バイタルデータをクラウドでリアルタイム監視
1. プロジェクト概要
バイタルデータ遠隔監視システム
本システムの利用顧客は、建築業界やインフラ整備を行う業者様を対象としており、建設現場やインフラ整備といった過酷な環境で働く作業者の健康状態をリアルタイムで把握し、健康を維持することを目的としています。
このシステムはヘルスケア業界の企業様にPoC版として提供しました。
2. 背景と課題
夏場の過酷な環境で働く作業者に対して、熱中症のリスクを事前に防ぎたいという目的から、地元の大学と連携し、熱中症リスクの早期把握を目指した実証実験を開始しました。
この技術は、一部上場企業様に向けてウェブサービスとして展開されています。
3. 開発内容
開発に使用したアーキテクチャ
・プラットフォーム・フレームワーク・ツール: AWS IoT Core、ECS、Athena
・通信技術: Sigfox
・プログラミング言語・フレームワーク: Python、PHP(Laravel)、Node.js
実装機能の詳細
・バイタルデータの送信: 複数のBLE通信デバイスからMQTTプロトコルを用いてサーバにバイタルデータを送信。
・リアルタイムのヘルス状態照会とアラート通知: ウェブ上でヘルス状態をリアルタイムに確認し、必要に応じてメールやSMSでアラートを通知。
・現場範囲指定とデータ発信制御: ポリゴン指定した現場範囲内でのみ、作業員の位置情報に基づいてデータ発信を制御。
・データ蓄積と機械学習対応: 将来的な機械学習対応として、アラート発生時の結果をアンケート形式で蓄積。
ソリューション構成とアーキテクチャの工夫
・オートスケールによる冗長化: 大量のバイタルデータの安定取得に向けて、オートスケーリング機能を活用した冗長化を実装。
・データストア設計: リアルタイム表示と大量データ分析の要件に対応するため、リレーショナルDBは限定的に使用し、用途別に最適化したデータストアを設計。
4. 開発プロセスと体制
複数の現場で初期段階の実証実験を行い、製品の機能面や性能面での基礎検証を実施しました。このフェーズでは、現場環境に適応させるために改良を重ね、技術的な課題や改善点を洗い出しました。
その後、複数回のPOC(概念実証)を通して、開発製品が現場のニーズや要件をどの程度満たしているかを確認し、ユーザーからのフィードバックを反映させながら、機能の精度と信頼性を向上させました。
大学様からいただいた課題に基づき、弊社と大学様で機器選定や通信方式の検討、要件定義を行いました。ハードウェアおよびファームウェアの製造については、それぞれの分野で専門的な企業にご協力いただきました。
POCでは、データ分析およびアルゴリズムの構築を大学様が担当し、弊社はシステムの調整を行いました。
5. 課題と解決策
現場位置情報の誤差対策
現場位置情報の誤差に対応するための対策を実施しています。
通信量の最適化
Sigfoxは通信量が非常に小さいため、発信データをバイナリ化し、1回あたりの送信データ量を極力抑えました。これにより、1日の送信量を効率化し、通信容量を最適に活用しています。
6. 開発の成果と効果
大手インフラ整備企業様に夏期の実証実験を実施いただき、「過酷な現場であることが当たり前」という意識が和らぎ、行動変容につながったとのご意見をいただきました。
7. 成功のポイント
IoTエンジニア、クラウドエンジニア、ウェブアプリケーションエンジニアといった弊社の幅広い技術者層に加え、大学様の知見を融合したプロジェクト体制を構築したことが成功のポイントとなりました。